岸田政権が掲げる経済政策「 新しい資本主義 」。「成長と分配の好循環」や「コロナ後の新しい社会の開拓」を目指すものですが、日本中から疑問の声が上がっている政策でもあります。
新しい資本主義は、ほぼ社会主義ではないか?という声もあり、そもそも意味不明だという意見も。
この記事では新しい資本主義とはいったいなんなのか、本当に社会主義的政策なのか徹底検証します。
新しい資本主義 とは?社会主義なのか
新しい資本主義とは?

新しい資本主義とは第101第内閣総理大臣である岸田文雄氏が掲げている経済政策で、「成長と分配の好循環」や「コロナ後の新しい社会の開拓」を目指すとしています。
経済成長を目指すことは極めて重要であると前置きしつつ、その経済成長のためには分配をすることが大切だと説きます。
「分配なくして次の成長なし」というキャッチフレーズのもと、成長と分配の好循環を目指すことに主眼を置いています。
「分配なくして成長なし」なぜそこまで分配が重要なのか
岸田文雄氏は、1980年代に先進国で主流になった「新自由主義」が経済格差を助長したとして、その弊害を是正することの必要性を強調しています。
岸田首相は新自由主義の結果、「競争の結果、確かに経済も発展したが、弊害も明らかとなり、格差の拡大、貧困の増加、地球環境の劣化や気候変動問題が顕著になった」と指摘しています。
岸田首相はもともと、分配することのみを強く強調していましたが、分配の原資を生む成長論がないとの批判を受け、「成長と分配の好循環」を実現すると表現を変えています。
では、分配を推進することで経済成長は成しえるのでしょうか?
日沖 健さんの言葉を引用すると、
「分配はパイを切り分けること」「成長はパイを大きくすること」と言い換えることができます。
しかし、パイの切り分け方を変えたとしても、パイ自体は大きくなりません。
つまり、分配をしたところで基本的には成長には繋がらないわけです。
しかし、ご存知の通り岸田首相は分配こそが成長の根源であると主張しています。
分配こそが成長の根源であると主張できる理由は、主に2点あります。
分配が成長を促す理由1.消費性向
高所得者よりも低所得者のほうが、一定期間に得た収入のうち消費に占める割合が高い(=消費性向が高い)ので、低所得者の収入が増えることで消費が増え、経済が活性化するという考えです。
分配が成長を促す理由2.人的資源の高度化
岸田首相は「『人』重視で資本主義のバージョンアップを」と主張するだけあって、人的資源の重要性も説いています。
分配が促進されれば、低所得者層の国民も教育への支出を増やす余力ができるので、人的資源の高度化を期待することができます。
確かに大学進学まですれば教育費もばかにならないので、高所得者層のお金を低所得者層に回し、低所得者層が中所得者層になれば教育への支出を増やして教育の高度化を達成することができるのも頷けます。
株主資本主義からの転換
株主資本主義とは会社は株主のものであり、株主の利益を第一に配慮して経営を行うべきという考え方です。欧米をはじめ、世界中の資本主義国家がこの会社は株主のものという考え方に基づき法律やルールが制定されてきました。
岸田総理は株主利益の最大化を重視する経済政策に疑問を呈して、株主資本主義からの転換は重要な考え方のひとつだと述べています(出典:岸田首相、株主資本主義からの転換は重要な考え方の一つ)。
これは、株主配当よりも従業員への賃金分配を重視する考え方で、日本の投資家に衝撃を与えました。
株主資本主義からの転換?
— 三崎優太(Yuta Misaki) 青汁王子 (@misakism13) January 26, 2022
寝言もいい加減にしろ、これまで以上にリスクをとって起業する人が減り、雇用が生まなくなる。その皺寄せはどこにくる?
これでますます日本株は買われなくなるね、日経平均をぶっ壊したいのか。一度起業して出直してこいぽんこつ。
新しい資本主義は社会主義なのか

分配が成長を本当に促進するのならば、格差のある資本主義よりも格差のない社会主義のほうが優れており、日本もそうすべきである、ということになってしまいます。
また、株主資本主義の転換に関しても、リスクを取って株式を購入した株主への配当を、政府が介入して企業の利益を配当ではなく給与に回すというのは現在の株式会社の仕組みの否定で、社会主義的だと非難する人も多くいるようです。
このような状況では、わざわざリスクを取っても企業の利益が配当にいかずに給与にいくものだから日本株に投資する人々は減ってしまいかねません。
楽天の三木谷社長も、新しい資本主義は社会主義であるとツイートしています。
新資本主義=社会主義 https://t.co/VFQIRRapUX
— 三木谷浩史 Hiroshi (Mickey) Mikitani (@hmikitani) October 6, 2021
ただ、あくまで新しい資本主義は社会主義的であるというもので、完全に社会主義であるというわけではありません。
資本が完全に国のものになるわけではないですし、現時点では給与水準が全員同じになるわけではありませんから、一応は資本主義経済でしょう。
しかし新しい資本主義に社会主義的な要素が含まれているのも事実です。
分配をしても経済成長にはつながらない

岸田首相は分配をすれば成長できると説いていますが、残念ながら分配をしたところで経済成長は期待できないと考えられています。
その理由は、主に以下の二つです。
- 分配を増やしても消費は増えない
- イノベーションや起業への逆風
ひとつづつ確認していきます。
分配を増やしても消費は増えない
日本はどんどん貧しい国になってきています。
貯蓄ゼロ世帯が増えてきていたり、年金がもらえるのかどうか、コロナという状況もあり引き続き会社は雇用してくれるか、首を切られないかを危惧しています。
そんな中で低所得者にお金が分配されたところで、消費が増えないのは目に見えています。
岸田首相になってから行われた10万円の給付のうち、5万円はクーポン券でした。なぜ現金ではなくクーポン券なのでしょうか?
それは現金を給付しても貯蓄に回され消費が増えないからです。政府はそれを自覚した上で、わざわざ追加予算をかけてまでクーポン券を配布したのです。
これらを考慮に入れれば、分配が行われても貯蓄に回されるだけで消費は増えず、経済成長には繋がらないのが目に見えています。
イノベーションや起業への逆風
起業をしたり、今までにないイノベーションを起こすことは当然リスクが伴います。
しかし、起業やイノベーションを成功させたとしても、分配によって富が低所得者層に回されてしまうのであればやる気を阻害してしまいます。
リスクを取っても富めないなら、リスクを取らず自動的に分配されるのを待つ人が増えるでしょう。そうなってしまったら、日本の国際競争力はさらに低下してしまいます。
起業やイノベーションを起こそうと努力する人々は、社会主義的な日本ではなくビジネスに適した国家へどんどん移住していきかねません。
国際競争力の低下だけでなく、優秀な人材の流出も進んでしまうのです。
岸田ショックで株価暴落

岸田文雄氏が内閣総理大臣に就任して以来、株価は下落傾向にあります。
2021年9月の時点で東証一部の時価総額は778兆円でしたが、2022年1月末では679兆円まで落ち込み、たった4か月で100兆円を吹っ飛ばしてしまいました。
岸田ショックの主な原因は以下の二つです。
- 金融所得課税の強化
- 自社株買い制限
ひとつづつ確認していきましょう。
金融所得課税の強化
金融所得課税とは株の配当金などにかかる税金で、現在は一律20%ですが岸田政権はこの課税を強化することを示唆しており、もし課税が強化されれば株を持つメリットが減ってしまいます。
自社株買い制限
自社株買いとは、その名の通り企業が自社の株を購入することです。企業が自社の株を購入することで、市場に出回る株が少なくなり、需要が高まる結果株価が高くなりやすくなります。
自社株買いをすることで、株主が保有している株の値上げを狙うものですので、これに制限をかければやはり投資家にとってはマイナスになってしまいます。
投資家からの支持率が低い「新しい資本主義」
分配を促進するために、投資家の利益を損ねるような政策を打ち出したことで、投資家からの岸田政権への支持率はわずか3.0%でした。
(経済専門チャンネル「日経CNBC」による調査)
2022年2月のNNNと読売新聞の世論調査では、内閣支持率が58%ですので、投資家からの支持率だけが異常に低いという状況にあります。
普段株式投資などをしない層からすれば、それなりの評価を得ていると言えるでしょう。
日本国民の多くは、株式投資をしていない方がマジョリティですのでこの支持率は当然かもしれません。
今後の動向に要注目
現状、新しい資本主義政策は投資家視点や経営者視点から見れば、よい評価を得ているとは言い難いです。
今後、岸田文雄氏の発言によってさらなる株価の乱高下が起こる可能性も考えられますので注視しておく必要があるでしょう。
また、今現在おおくの株式を保有している方やこれから投資を考えている方は、今一度、戦略を考え直しても良いかもしれません。